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会社法

企業がデラウェア州を選ぶ理由


なぜあえてデラウェア州なのか」「なぜこんなに小さい州(米国で二番目に面積が小さい州)が企業にとってこれほど大きな存在となっているのか」といった疑問を持つ方も多いと思います。もちろん正解は一つではありませんが、実に多くの人が勘違いをしているようです。まず第一に、デラウェア州はタックスヘイブンではありません。第二に、デラウェア州は、世間に対して情報を開示する義務や調査に応じる義務を負わない「秘密の」会社の設立を特別に認めているわけではありません。また、設立費用が特に安いわけでもありません。格安ショップのDollar Storeよりはむしろ、バーグドルフ・ゴッドマンやティファニーといった高級ブランドに近いイメージです。すなわち、支払った金額に見合う高いレベルの品質・サービスが得られる場所、それこそがデラウェア州の持ち味なのです。

デラウェア州は、「経営者寄り」でも「株主寄り」でもありません。デラウェア州が目指しているのは、倫理水準及び採算性の高いビジネスの実現のために経営者と出資者の両方にとって最適な法律を整備することであり、それを達成するための方法として、経営者が柔軟な判断を行うことができるように経営者に対して大きな裁量を与える一方で、かかる裁量が出資者の最善の利益のために行使されるように確保するべく、説明責任を課しています。デラウェア州の裁判官は常に公平な立場で判断を行っており、特別利益団体に肩入れすることも、政治の風向きにあわせて特定の政党に有利な判決を下すこともありません。デラウェア州の会社法をめぐる裁判では、他の多くの州の場合と異なり、職業裁判官のみで審理を行っており、陪審員が審理に参加することはありません。

デラウェア州は1900年代初頭から法人の設立に最適な州としての地位を維持してきました。そして現在、デラウェア州を設立準拠地とする企業の数は、100万社にも及びます。このように、企業の数という点でデラウェア州は他を圧倒していますが、それよりも注目すべきは、主たる証券取引所に株式を上場している大手企業・有名企業の多くがデラウェア州にて設立されていることです。この点は、Fortune 500に選ばれた企業の60%以上がデラウェア州法人であることからも明らかです。もちろん、米国の企業のみならず、世界中のあらゆる企業がデラウェア州の法人設立制度のメリットを享受することができます。 [参照:国境を越えて:デラウェア州がグローバル企業に提供できるメリット]

デラウェア州が会社の設立に最適な州と認識されるに至った理由はいくつかあります。

一つ目は、法律という面でのメリットです。法律とはすなわち、デラウェア州の会社法の中核をなすデラウェア州一般会社法(Delaware General Corporation Law)(以下「デラウェア州会社法」といいます。)のことです。[参照:デラウェア州の法的安定性のある「授権法」] 高い予測可能性と法的安定性を備えたデラウェア州会社法は、会社法の分野に精通した有識者による議論・検討を経て起草されたものであり、特別利益団体による影響を排除するための措置も講じられています。加えて、デラウェア州の立法機関は、デラウェア州会社法が常に時代に即したものとなるように、毎年その内容の見直しを行っています。

デラウェア州会社法は、「授権法(enabling statute)」に分類される法律でもあります。詳細かつ「規範的(prescriptive)」な会社法を導入している国が多い中、デラウェア州会社法は、投資家を保護するための重要な義務をいくつか定めているほかは、企業の経営に柔軟性をもたせるような内容となっています。また、デラウェア州では、株式会社以外の法人についても、デラウェア州会社法に定める原理原則が盛り込まれた法律が導入されています。[参照:デラウェア州における株式会社以外の法人]

二つ目は、裁判所です。法律の解釈を行う裁判官には、法律そのものに勝るとも劣らない重要性があるものと思われます。デラウェア州は、会社法をめぐる案件に関して、優れた司法制度が整備されていることや、高い専門性と公平な考えをもつ裁判官による判断が得られることが、世界的に評価されています。[参照:デラウェア州衡平法裁判所及びデラウェア州最高裁判所に提起された訴訟] デラウェア州衡平法裁判所(Delaware Court of Chancery)は、企業をめぐる紛争の解決に特化した衡平法裁判所であり、陪審員ではなく、超党派的に能力に基づいて選ばれた5名の法律専門家が審理を行うことで、柔軟な、状況に即した、集中的な、かつ効率的な紛争の解決を図っています。デラウェア州衡平法裁判所の判断に納得がいかない場合には、デラウェア法に関して最終的な判断を下す権限をもつデラウェア州最高裁判所(Delaware Supreme Court)に直接控訴することができます。デラウェア州最高裁判所には、デラウェア州のビジネス法に関して豊富な経験を有する5名の裁判官がいます。デラウェア州の裁判所は、裁判上の手続きのほかにも、複数の裁判外紛争解決制度を設けています。 [参照:デラウェア州における裁判外紛争解決手続]

三つ目は、判例法です。デラウェア州衡平法裁判所及びデラウェア州最高裁判所には、判決を出す際に、判決に至った理由を具体的に説明する意見を示す慣習があるため、過去何十年にもわたって先例が蓄積されています。 会社法をめぐる裁判で判断を下すのは陪審員ではなく裁判官であり、裁判官は判決の根拠となる理由を必ず示さなければなりません。企業及びそのアドバイザーは、このように蓄積された過去の前例において示された詳細かつ重要な基準を参考にすることができます。

デラウェア州の判例法に基づく重要な原則の一つとして、「経営判断の原則(business judgment rule)」が挙げられます。これは、取締役が誠実に、かつ、相当の注意を払って行った経営判断については、たとえ結果が悪い方に出た場合であっても、裁判官はその是非を問うべきではないという原則です。この原則のほかにも、判例法により、取締役の信認義務(忠実義務)及び注意義務に関する原則が形成されています。[参照:デラウェア州の考え方:忠実かつ慎重に職務を遂行する取締役が行う経営判断には敬意を払う]

四つ目は、法曹界の伝統です。デラウェア州には、優れた裁判官に加えて、デラウェア州の会社法を熟知した弁護士も多数います。デラウェア州において企業法務や企業をめぐる取引を専門とし、デラウェア州の裁判所とやりとりする弁護士は、デラウェア州の制定法及び判例法から基本的な知識を学び取った上で、デラウェア州の現行法の内容を検証し、改正案を提案するなどして、時宜を得た法改正の実現に寄与しています。[参照:デラウェア州の法的安定性のある「授権法」] デラウェア州法人がどこに本拠地を構えていても、デラウェア州法に関する問題の解決をサポートしてくれる優秀な弁護士をみつけるのに苦労することはありません。

五つ目は、デラウェア州の州務長官ですデラウェア州州務長官室(Delaware Secretary of State’s Office)の会社部(Division of Corporations)及びそのアドバイザーらは、企業やそのアドバイザーに対して速やかにかつ効率的にサービスを提供するために設けられた機関です。法人設立はデラウェア州の大きな収入源となっているため、デラウェア州は法人設立に係る業務に特に真剣に取り組んでいます。州務長官室の会社部の職員は、サービス業に従事する者としての心構えをもっており、会社部全体としても、ISO 9001の認証を得ていることからも明らかなように、その業務水準が世界的に認められるレベルに達しています。

デラウェア州州務長官室の会社部は、世界中から届く申請書等に対応するべく、業務時間を通常よりもはるかに長い15時間としています。また、緊急性が高い、あるいはタイミングが鍵となるような事案については、特別かつ優先的な対応をとる場合(例えば、1時間、2時間又は24時間にわたって集中的な対応を行う場合)もあります。[参照:デラウェア州法に基づく株式会社の設立] 会社部は、デラウェア州の優れた弁護士や実績のある登録代理人その他の関係者と連携・協力することにより、幅広い事態に対応することができます。


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