デラウェア州に会社を設立するメリットは、主としてデラウェア州一般会社法(以下「デラウェア州会社法」といいます。)に基づいて発生しています。(なお、デラウェア州では、株式会社以外の法人についても、進化を遂げた近代的な法律を導入しています。)[参照:デラウェア州における株式会社以外の法人]) デラウェア州会社法は、一定の事項を定める又は定めないことによって、企業家、経営者及び株主による会社の設立・経営を通じた利益の実現に寄与しています。

まずはじめに、デラウェア州会社法に定めのない事項を把握しておくことが肝要です。デラウェア州会社法は、所有者(株主)と経営者(取締役・役員)との関係など、会社の内部に関する事項についてのみ定めています。すなわち、デラウェア州会社法は、本質的には、会社を経営する者及び会社に出資する者の役割(権利)、責任(義務)及び両者の関係について定める特別法(一般法である民法の特別法)であるため、規範的(prescriptive)な大陸法タイプの「会社法」とは違い、競争、労働、証券に係る情報の開示といったビジネス法の他の側面には全く触れていません。企業は、事業を行っている国及び州において、競争、労働、証券に係る情報の開示など、様々な法律を遵守しなければなりません。デラウェア州では、企業統治(コーポレートガバナンス)をこれらの分野から切り離して独立した法律として会社法を制定しています。もちろん、デラウェア州にも、競争法、労働法、証券関連法その他社会への影響を理由に規制すべきとされる事項について定める法律はありますが、それらは、デラウェア州内で事業を行っている会社に対してのみ適用されます。例えば、デラウェア州の労働法及び環境関連法は、デラウェア州の物理的境界線の内側で行われる事業に対してのみ適用されます。一方、デラウェア州の会社法は、会社の所在地がどこであろうと関係なく、すなわち会社の本拠地が他の州・国に置かれた場合であっても、デラウェア州法に基づき設立された全ての会社に対して適用されます。

連邦法が会社の事業に関して重要な役割を果たす場合もありますが、会社の内部に関する事項は、主として州法が定めています。会社は、設立準拠法として選択した州法に基づいて設立されます。一般的には、州の関係当局(デラウェア州の場合は州務長官室の会社部)に対する法人設立申請書類の提出が必要となります。会社の設立が認められた場合には、会社の定款その他の根本規則、株主の権利、取締役の信認義務(忠実義務)については、設立準拠法たる州法が適用されます。[参照:デラウェア州の考え方:忠実かつ慎重に職務を遂行する取締役が行う経営判断には敬意を払う]

会社の経営者及び出資者は、会社の経営及び業務に関して州法が果たす役割の大きさと、会社の本拠地が実際にどこであろうと関係なしに州の会社法が適用されることを踏まえて、会社の設立地の決定を極めて重要な事項と捉える必要があります。また、会社は、その設立地である州の裁判所に訴え等が提起された場合には、その裁判管轄に服することとなるため、どの州の裁判所が望ましいかという観点からの検討も必要です。 [参照:デラウェア州衡平法裁判所及びデラウェア州最高裁判所に提起された訴訟]

デラウェア州法が会社の設立準拠法として好まれる理由の一つとして、デラウェア州会社法が会社の経営に関して株主及び経営者に対して最大限の裁量を認めていることが挙げられます。大陸法を採用している法域においては、強行規定が多数盛り込まれた「規範的(prescriptive)」な会社法が主流となっていますが、デラウェア州会社法は、個々の会社に最も適した制度や手続の導入を可能とする「授権法(enabling statute)」としての性質を有しています。デラウェア州会社法は、強行規定を最小限にとどめており、投資家を保護する目的において最重要とされる事項(取締役を選任する権利、重要な取引について決議を行う権利など)のみを強行規定としています。加えて、強行規定の中には、経営者と株主の合意によりその適用を排除できるものもあります。

デラウェア州の外では、コーポレートガバナンスや証券関連規制の立法プロセスをめぐって政党間の小競り合い、軽率な不祥事を利用した働きかけ、特別利益団体によるロビー活動などがみられる場合もありますが、デラウェア州では州法の改正は必ず慎重な検証及び検討を経た上で行われており、法的安定性が確保されています。デラウェア州憲法により、会社法を改正するには立法機関において3分の2以上の賛成を得ることが必要とされているため、特別利益団体や影響力のある企業のその場限りの提案によって安易に改正されることはありません。これにより、デラウェア州法人は、デラウェア州会社法を法的安定性及び予測可能性を備えた法律として信頼することができます。そしてこの信頼は、デラウェア州法人が長期的な事業計画を策定するにあたって大きな拠り所となります。

また、デラウェア州の立法機関は、コーポレート分野において豊富な経験を有するデラウェア州の弁護士から成る諮問機関を設置しており、諮問機関は立法機関の要請に応じて助言や法改正の提案を行っています。諮問機関のメンバーは、多種多様な法律専門家(取引専門弁護士、原告側代理を専門とする弁護士、企業側の代理を専門とする弁護士など)の中から選ばれますが、各人に共通しているのは、デラウェア州の会社法を熟知しており、日々の業務においてデラウェア州の会社法を取り扱っていること、そしてデラウェア州以外の国や地域の法律に精通している専門家に相談するためのパイプラインをもっていることです。 諮問機関は、デラウェア州会社法の見直しを毎年行い、その内容がデラウェア州法人の経営者及び出資者のニーズや最新の状況に対応したものとなるような改正案を提案しています。政党間で意見が対立することはまずありません。なぜなら、デラウェア州法人に対して何超円という出資が行われていることを考えれば、経営者及び出資者が完全性、実効性及び信頼性が確保されている法律に依拠できるような環境を整備することがいかに重要かについては、どちらの政党も異存がないからです。したがって、デラウェア州会社法は、長い歴史を通じて築き上げられた安定した土台の上に会社法に関する最新の考え方を取り入れていくことによって進化を遂げてきたのです。