概要

  • 米国の公開会社の50%以上、Fortune 500に名前が挙げられている会社の64%、そして外国に本拠地を置く何千もの会社がデラウェア州に籍を置いています。
  • 会社の設立に関して重大な意思決定を行う場合には、会社を組織としてうまく機能させるためにはどのようなコーポレートガバナンス体制を採用すべきか、どのような出資形態が望ましいかについて、企業経営や法律の専門家にアドバイスを求めることをお勧めします。
  • デラウェア州における法人設立プロセスは、シンプルで無駄がありません。基本的には、会社名(商号)と法人形態を決める、登録代理人を確保する、定款(Certificate of Incorporation)を作成して提出するという3つのステップがあります。
  • デラウェア州の州務長官室会社部(Division of Corporations)は、利用者に対して、レベルの高いサービスを提供し、迅速な対応を行っています。
  • デラウェア州で会社を設立するための手順をわかりやすくまとめたマニュアルが州務長官室会社部(Division of Corporations)のウェブサイトに掲載されていますので、是非ご覧になってください。

これまで100年以上にわたってデラウェア州が会社の設立地として好まれてきたのは、デラウェア州の先進的な考えを取り入れた柔軟な会社法や専門性に富んだ効率的な裁判システム、企業に好意的な州政府の姿勢が評価されたことによるものと思われます。

デラウェア州法人の設立手続は、無駄なくきちんと確立されています。以下の各項では、設立手続のポイントをステップごとにまとめてあります。

重要なステップ:コーポレートガバナンス体制及び出資形態に関する重要事項について専門家にアドバイスを求めた上で慎重に検討を行う

デラウェア州で会社を設立するにあたって弁護士に相談することが法律上義務づけられているわけではありません。しかし、デラウェア州の法律の適用を受けることにビジネス上のメリットがあると考えてデラウェア州を設立地として選ぶのであれば、メリットを最大限活用するためにも、前もって専門家のアドバイスを受けておくことをお勧めします。取締役会の構成、株式の発行、出資形態及び会社の諸機関の権限の範囲については、設立プロセスの早い段階で決めておくことで、その後発生しうる紛争や経済的損失を未然に防ぐことができます。

デラウェア州が選ばれるのは、コストを低く抑えられるからではありません。そもそも、コストが低いというのも、単なるイメージで実際はそうとは限りません。デラウェア州は、高い予測可能性及び効率性を備えた法律にこそ、その魅力があります。スタート当初から慎重に計画を練らないと、得られるはずであったメリットを失うことにもなりかねません。この点に関して、デラウェア州の会社法は、経営者及び株主が可能な限り自由に機関設計を行うことができるように柔軟な規定を設けていることをお忘れなきようお願いします。デラウェア州で法人を設立する場合には、デラウェア州の会社法に定める任意規定を最大限活用することで、実態に即した内容の定款を作成することができます。また、デラウェア州では、株式会社のほかに、パートナーシップやリミテッド・ライアビリティ・カンパニーなど、様々な法人形態が認められていますので、多数の選択肢の中から最も適したものを選ぶことができます。それぞれにメリットとデメリットがありますので、どのようなニーズがあって、何を目的としてビジネスを行うのかを明確にした上で、どの法人形態が最も適しているかについて専門家に意見を求めることが望ましいと考えます。

商号を決める

デラウェア州法人の商号は、一定の要件を満たすものでなければなりません。まず一つ目の要件が「独自性」です。したがって、商号を決める際には、デラウェア州に同じ商号の会社が存在しないことをあらかじめ確認しておく必要があります。類似商号の有無は、オンラインの検索サービスを使って確認することもできますし、州務長官室会社部(Division of Corporations)のウェブサイトにて法人設立手続完了前に商号を「予約」しておくことも可能です。

次に、二つ目の要件ですが、デラウェア州法人の商号は、法人形態を示す「Corporation」「Incorporated」若しくは「Limited」又はそれらの略称を末尾に加えなければなりません。なお、「GmbH」、「S.A.」等、米国以外の国で一般に使用されている法人形態の略称については、認められる場合があります。これら二つの要件を満たす商号であっても、事実を誤信させる又は何らかの被害をもたらすおそれがあるという理由で州務長官室会社部(Division of Corporations)に却下される場合はあります。例えば、「Bank(銀行)」、「Trust(信託)」といった言葉を商号に組み込むためには、規制当局の承認が必要ですし、下品な言葉を含む商号も州務長官室会社部(Division of Corporations)の審査で却下されます。

登録代理人を選ぶ

デラウェア法上、会社は必ず登録代理人を置かなければなりません。登録代理人とは、デラウェア州における通常の業務時間内に裁判所からの召喚状や公的機関からの通知書等を会社に代わって受領する役割を担う代理人のことです。登録代理人は、デラウェア州に、文書の送付を受けることのできる住所を有する者でなければならず、かかる住所は正式に登録されたものでなければなりません。また、登録代理人に届いた通知書等を登録代理人から転送してもらう権限を有するパートナー、役員、従業員又は代理人の氏名、勤務先住所及び勤務先電話番号も必要になります。かかる情報は登録代理人が保管・管理するものであって、原則として非公開ですが、裁判所命令によりその開示を要求することは可能です。したがって、デラウェア州は、経営者が身元を完全に秘匿して設立運営する「秘密の会社」を特別に認めているわけではありません。

デラウェア州に実際に事務所や営業所を置いている会社の場合は、自分で自分の登録代理人を務めることもできますが、あえてそうせずに第三者に登録代理人業務を委託している場合がほとんどです。いずれにせよ、法人設立申請書類を提出する前に登録代理人を選定し、直接連絡をとって必要なやりとりをすませておくことが大事です。登録代理人を選ぶ際には、候補者についてデューディリジェンスを実施し、デラウェア州の法人設立に関する法律に精通していること、及び、他の事業拠点における許認可等の取得にも対応できる能力等を有していることを確認するようにしてください。

定款の作成及び提出並びに法人格の維持

次のステップは、定款の作成及び州務長官室会社部(Division of Corporations)への提出です。定款の様式は、法人の形態によって異なります。ウェブサイトに各種様式のサンプルが掲載されていますので、ぜひご覧になってください。

定款には、商号、登録代理人の氏名・住所及び定款の届出を行う権限を有する者(「発起人」)の氏名・住所を記載し、発起人の署名を付さなければなりません。定款の記載内容は公開情報として取り扱われるので、その点にご留意ください。なお、株式会社の場合は、授権株式数及び1株あたりの額面金額も記載する必要があります。定款を含む設立申請書類が州務長官室会社部(Division of Corporations)の審査をクリアしたら、会社が有効に設立された旨を確認する証明書が送付されます。

設立されたデラウェア州法人を「有効な状態(in good standing)」で維持するためには、年次報告書の届出、法人税の納税等、一定の義務を継続的に履行しなければなりませんが、かかる届出等はオンラインで実施することが可能です。

デラウェア州法に基づき会社を設立したからといって、デラウェア州又はその他の場所で事業を行う免許を取得したことにはなりませんので、その点に注意する必要があります。事業を行うためには、当該事業について管轄権を有する規制当局から必要な許認可等を取得しなければなりません。法人設立と事業免許の取得の区別については、「設立の次は?(会社の設立と事業免許の取得はどう違うのか?)」と題された項目をご参照ください。

まとめ

デラウェア州法人の設立手続そのものは簡単ですし、設立の申請に必要な全ての書類を州務長官室会社部(Division of Corporations)のウェブサイトからダウンロードすることができます。デラウェア州における法人設立プロセスは、シンプルである一方、個々のニーズに適した法人形態を実現できるような柔軟性の高いものとなっています。しかし、設立申請手続が簡単だから事前に慎重に検討を行う必要はないと考えているとすれば、それは大きな間違いです。デラウェア州で会社を設立する場合には、事前に慎重に計画を練っておかなければなりません。具体的には、コーポレートガバナンス体制及び出資形態について課題の洗い出しを行い、慎重に検討を重ねた上で下した判断と経験豊富な弁護士から得られた助言を定款等に正確かつ明確に反映させておく必要があります。後々後悔しないですむように、手間を省かずに慎重にプロセスを進めてください。

リンクサイト: