俗説:デラウェア州は、法人設立に関して米国内最大の規模を誇っている。

事実:デラウェア州は、米国の証券取引所に株式を上場している会社の設立地として最も好まれている州です。実際、かかる上場会社の半数以上(Fortune 500に名前が挙げられている会社の64%を含みます。)がデラウェア州に籍を置いています。また、デラウェア州外に本拠地を置く会社が他の州において子会社等を設立する場合についても、デラウェア州が最も好まれる傾向にあります。

もっとも、上場会社に限らず全ての企業の数でみた場合には、デラウェア州は上位には入りますが、トップに君臨しているわけではありません。年間の設立件数でみた場合、デラウェア州は、フロリダ州、カリフォルニア州、ニューヨーク州、テキサス州とともに常にトップ5に入っています。2012年末時点において、100万近いデラウェア州法人(休眠会社を除きます。)が存在していますが、米国全体における企業数は2,000万にも及び、その多くがいくつかの州に集中しています。

中小企業については、事業(の大部分)を行う州と設立州を一致させる方がコスト的に有利となる場合が多いのに対し、米国の公開会社、M&Aを積極的に行うグローバル企業及び複雑な形態の法人については、デラウェア州が米国で最も魅力的な州であると世界的にも評価されています。このような洗練された企業の視点で見た場合、デラウェア州の会社法が経営者にとって高い予測可能性及び柔軟性を備えたものでること、並びに、デラウェア州の法律及び裁判所が出資者を重要な点において手厚く保護していることは、事業を行っていないデラウェア州を設立地とするに値する十分な理由となっています。


俗説:デラウェア州は、昔から上場会社に最も人気のある設立州であった。

事実:デラウェア州は、今でこそ上場会社に設立州として好まれていますが、昔は必ずしもそうではありませんでした。デラウェア州が現在の地位に躍り出る以前は、ニュージャージー州に人気が集中しており、上場会社の間でも一番人気を誇っていました。実際、20世紀への変わり目に米国の近代会社法が誕生した頃、ニュージャージー州、メイン州及びニューヨーク州が設立州のトップ3に君臨しており、デラウェア州は、勢力を伸ばしつつあったものの、トップ3との差はまだ歴然でした。

デラウェア州は、1899年にニュージャージー州に倣って一般会社法を制定しました。その後10年以上が経過した頃、ニュージャージー州は、合併規制を導入するための会社法の改正を何回かに分けて実施しました。かかる改正は、激戦が繰り広げられた大統領選挙の後に当時の州知事(Woodrow Wilson)によって強引に推し進められたものです。それもあって、コーポレート分野を専門とする弁護士やその他の関係者の間でニュージャージー州の政治情勢や法制度を疑問視する声があがるようになりました。その頃のデラウェア州の会社法は、ニュージャージー州の会社法の魅力的な部分を取り入れたところで止まっており、問題とされた改正部分は何ら盛り込まれていませんでした。また、デラウェア州は、デラウェア州一般会社法を改正するには上院及び下院の両方において3分の2以上の賛成票による決議を要する旨の規定が1897年デラウェア州憲法に定められていたため、法的安定性という点で他の州から一歩抜きん出ていました。これらの特長によりデラウェア州は設立州として好まれるようになり、その後も一貫性、予測可能性、法的安定性及び質の高さの実現に力を入れて取り組むことにより、現在の地位を確立するに至ったのです。


俗説:デラウェア州は、会社に対する規制の完全撤廃又はそれに近い状態を実現することによって、「底辺への競争」に勝利した。

事実:デラウェア州は、他の州と同様に、法人による不正行為による被害から人々を守るため、多岐多様な法規制を設けています。かかる法規制は、環境という意味での空気、労働者の安全、人種差別・性差別、上水道の水の質、飼育・販売される養鶏の健康など、多方面に及んでいます。規制の中には厳しいものや緩いものがありますが、「規制の完全撤廃又はそれに近い状態」では決してありません。なお、かかる規制は、デラウェア州内で事業を行っている会社に適用されるものです。

上記の法規制は、デラウェア州の会社法とリンクしたものではなく、デラウェア州において法人を設立するか否かを検討する際に考慮しなければならないものでもありません。デラウェア州法に基づいて会社を設立するということは、単に、会社の「内部関係」(すなわち、定款の解釈、株主と取締役の関係といった事項)についてデラウェア州の会社法に服することを決めたということに過ぎません。 デラウェア州において会社を設立した場合にはデラウェア州の会社法は適用されますが、他のデラウェア州の法規制は必ずしも適用されないのです。デラウェア州法人は、事業を行う場所を管轄する当局の規制に服することになりますし、デラウェア州法に基づく設立許可には、会社の「内部関係」とは無関係の事項について他の法域の法規制の適用を免除する効果はありません。例えば、デラウェア州法に基づいて設立された会社がデラウェア州以外の10の州において鉱山の運営を行う場合には、かかる10の州それぞれが設けている鉱山関係の法律及び規制並びに鉱山に関する連邦レベルの法律及び規制を遵守しなければなりません。一方、取締役の株主に対する責任といった内部関係に関する事項については、デラウェア州法が適用され、デラウェア州の裁判所が強制執行に関する権限を有します。

デラウェア州一般会社法の詳細については、[デラウェア州の法的安定性のある「授権法」]をご参照ください。また、株式会社以外の法人形態をとる場合に適用される他の会社法については、[デラウェア州における株式会社以外の法人] をご参照ください。なお、これらの法律は、デラウェア州のウェブサイトにも掲載されています。


俗説:デラウェア州は、株主の利益よりも経営者の利益を重視することによって、「底辺への競争」に勝利した。

事実:デラウェア州が設立州に選ばれる大きな理由として、デラウェア州に内容の充実した会社法があり、その効果的な運用を可能にする優秀な裁判官がそろっていることがデラウェア州法人の生産性の向上に寄与している点が挙げられます。具体的には、経営者及び取締役が良い経営判断(会社の最善の利益を考えてビジネスリスクを負うことを決断するなど)を行うことができるようにしたり、会社の利益に反する行為や利益相反行為を規制し、制裁措置を設けたりしています。デラウェア州は、バランスのとれた会社法により、取締役、役員及び支配株主に対する保護をより手厚くする方針をとってきた州と、少数株主の利益の保護に傾倒しがちな州のどちらにも属さない、中立的な立場を確保することができています。このような実態を踏まえて、会社法について「競争」は存在しないし、もしあるとしてもそれは「規制緩和」ではなく「規制の充実化」を目指すものであると主張する学者も少なくありません。

結局は、株主に対して与えられる権利及び自由(柔軟性)、訴訟における株主の権利の保護といった点でデラウェア州に勝る州はないという結論に至ります。むしろ、他の州の多くは、経営者の保護を強化することでデラウェア州に対抗しようとしています。これらの州では、企業の買収防衛策を可能にする法律が制定されているほか、企業買収の障壁となるような関連規制及び経営者が株主の利益を最優先して意思決定を行わなければならない事項を限定するような関連規制があえて設けられています。

デラウェア州は、バランスのとれた柔軟な法律があって、出資者(株主)の正当な利益が保護されるような制度が導入されているからこそ、米国の上場会社の出資者及び経営者双方から設立州として好まれるようになったのです。


俗説:デラウェア州には「税金の抜け穴」があるため、他の州に対する納税義務を免れることができる。

事実:米国が敷いている連邦制では、複数の州にまたがって事業を行っている企業等の利益から得られる税収をいずれかの州が独り占めすることはできないようになっています。むしろ、売上高、資産及び従業員の状況に応じて関係各州の間で税収配分を行うのが通常です。デラウェア州は、面積が狭いということもあって、企業が負担する税金は、連邦レベルの税金や他のより大きな州に支払う税金に比べると金額も低く、米国内外において大規模なビジネスを行う企業にとってたいした問題とはなりません。

米国では、50の州それぞれが独自のやり方で収入を確保しています。ほとんどの州が、消費税及び使用税(付加価値税のようなもの)、個人所得税、固定資産税及び法人所得税の徴収により税収を確保しています。デラウェア州の重要な財源として、デラウェア州法人から徴収する個人所得税及び年次ベースで課税されるフランチャイズ・タックス(州法人税)が挙げられます。デラウェア州で事業を行う者は、デラウェア州における事業活動及び売上げに係る法人所得及び総収益に基づいて課税されます。デラウェア州は、事業を行う会社にとってそれなりに魅力的な租税環境が整備されていると一般的にみられています。もっとも、州によっては、州内で事業を行う会社に対する税金(個々の、あるいは全体としての税金)を、デラウェア州よりも低く設定している場合があります。

50の州全てにおいて、税金の免除及び控除に関する制度が設けられています。デラウェア州法上も、一定の要件を満たすデラウェア州持株会社(すなわち、無形資産のライセンスの付与といった受動的な経済活動からの収益が収益全体の100%を占めている会社をいいます。)については税金が免除されます。これは税金の抜け穴ではなく、デラウェア州の税制上の戦略(すなわち、複数の州にまたがって事業を行う会社をデラウェア州に誘致するための戦略)の一環として導入されたものです。なお、他の州も、同じような目的のために、別の免除制度を設けたり、法人所得税(もし課税するのであれば)を引き下げたりしています。加えて、かかる免除制度は、100万を超えるデラウェア州法人の1%にも満たない(しかも数がさらに減少する傾向にある)デラウェア州持株会社に対してのみ適用されるものであって、その適用範囲は極めて限定的です。

また、多くの州では、州内で事業を行う企業からの税収に対する公平な「分け前」を手に入れるための制度を導入しています。20を超える州において、「combined reporting」という税制が敷かれています。これには、複数の州にまたがって事業を行っている会社が税率の高い州から税率の低い州に事業をうつしてしまうような事態を防止する効果があります。「combined reporting」を採用していない州の中には、節税を主たる目的とするグループ間取引について税額控除を無効とするために「add-back(足し戻し)」を命じるなどして対応しているところもあります。


俗説:デラウェア州は、アメリカの「オンショア」(国内)のタックス・ヘイブンである。

事実:デラウェア州と主権国家であるケイマン諸島等を正確に比較できていないという点がまず挙げられます。デラウェア州法人は、他の州において設立された法人と同じように連邦税法の適用を受けます。米国はタックス・ヘイブンであると主張する人もいますが、その理由・根拠としてよく挙げられるのは、(1) 海外子会社・関連会社の米国外における収益は、それが本国(米国)に送金されない限り課税対象外とされること、及び、 (2) メンバー(出資者)が1名しかいないLLCは、米国のどの州において設立されたかにかかわらず、「disregarded entities(所有者と一体不可分として取り扱われる事業体)」に該当するとみなされるため、LLCのメンバー(出資者)が非居住者である場合には、米国外で発生した収益について課税されません。このような議論の内容が正しいかどうかは別として、これは結局米国の連邦税法に関する話であって、デラウェア州を含む州レベルの会社法や税法とは全く無関係の話です。国際的な脱税行為や租税回避行為の規制の鍵となるのが、米国財務省(及び米国の金融機関に適用されるマネーロンダリング規制を管轄するその他の関係当局)の規制運用における断固たる姿勢と、金融規制システムがきちんと確立されていない国におけるマネーロンダリング問題への対応の強化です。デラウェア州は、他の多くの州と同様に、連邦政府のみならず、国際的な規制機関と積極的に協力・連携体制を構築しています。


俗説:デラウェア州で会社を設立すると、出資者及び経営者の両方が匿名性及び秘密性を確保することができる。

事実:米国では、会社の所有者(株主その他の持分保有者)、パートナー、役員及びその他の責任ある立場にいる者に関する情報を、内国歳入庁(IRS)その他の税務当局が収集しています。デラウェア州法人の場合はデラウェア州歳入局(Delaware Division of Revenue)が情報収集を行っています。かかる情報の収集は、例えば、納税者識別番号の申請手続、年次確定申告の提出、金融口座の保有に関する報告といったプロセスを通じて行われます。

一般的に、米国では、会社設立手続において、会社の実質的所有者(すなわち、会社を実際に所有若しくは支配し又は会社から生じる利益が最終的に帰属する者)の氏名・名称を提出することは要求されません。しかし、デラウェア州その他多くの州が取締役の氏名の開示を義務づけています。加えて、デラウェア州法人は、年次フランチャイズ・タックス(州法人税)報告書に取締役の氏名及び住所を記載しなければなりません。かかる報告書に限らず、デラウェア州の州務長官室会社部(Delaware Division of Corporations)に対して提出されるあらゆる届出等が公開記録として一般の閲覧に供されています。

デラウェア州は、透明性を高めるために様々な措置を講じてきました。2002年には、他の州に先んじて、米国で初めて、無記名式の株式(無記名式の株式は、譲渡が株券の物理的な引渡しのみによって成立し、譲渡の事実が株主名簿等に登録されないため、規制当局の目が行き届かないという問題を孕んでいます。)の販売を禁止する規制を導入しました。そして2006年には、米国初の法人関係の登録代理人に関する法律を制定しました。この法律により、デラウェア州は、登録代理人による詐欺的行為を取り締まる権限をもつこととなりました。また、デラウェア州は、株式会社及びLLCに対し、登録代理人とのやりとりの窓口を務める者を決める義務を負わせていますので、各会社につき個人の名前が表に出るようになっています。2012年には、デラウェア州の州務長官が新たな上場審査基準を導入したことで、「ペーパーカンパニーやダミー会社」、「匿名性・秘密性」を売り文句にしていた会社設立関連サービス業者に対する厳しい取締りが行われるようになりました。さらに、デラウェアの裁判所も、法人の不適切な利用に関する問題(実体のないペーパーカンパニー等)に対して戦いを挑むことを可能にする制度・手続を用意しています。

何よりも、デラウェア州には、経営者、出資者及び法執行機関がデラウェア州法人の帳簿及び記録を調査できるような法的仕組みがあります。かかる調査がいかに重要かは、その申請件数の多さからも明らかです。つまり、デラウェア州では、秘密性という点において、他の州や連邦レベルの法規制に比べて会社側に特に有利となるような制度を敷いているわけではありません。むしろ、透明性を確保するための取組みにどの州よりも真剣に取り組んできたというのがデラウェア州の正しい姿です。